失うもの。

「今月いっぱいで閉めるんです。」

ぽつりと旅館のご主人が言った。

都会の繁華街に忽然と現れる旅館、「舞鶴」
その佇まいが好きで何度か泊まっていた。

今朝も縁側の先に望む池には草木が濃い影を落とし
清々しい初夏の空気を運んで来ていた。

青く冴えた空。
まさに晴天の霹靂だ。

 

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